BPOの利用が拡大したのは、ここ数年のこと
現在では、部署単位で事業のアウトソーシングをする「BPO」の利用が広がりつつありますが、BPOの利用が拡大したのは近年のことで、かつては、部署単位で一括的に事業をアウトソーシングする事例はほとんど見られませんでした。
それでは、どのような経緯でBPOが利用されるようになったのでしょうか。企業経営における環境の変化を踏まえながらBPOの利用が広がった流れについてみていくことにしましょう。
BPOは、いつ頃から利用されるようになった?
BPOはいつ頃から利用されるようになったのでしょうか。
野村総合研究所(NRI)が発行している月刊誌、「ITソリューションフロンティア」の2009年7月号に掲載された「日本におけるBPO活用の展望」の内容によると、世界的に見た場合、BPOの利用が始まったのは2002年のことで、当時はIBMなどのIT企業が利用していました。
世界では、2000年代前半の利用開始を皮切りに、2000年代後半にかけてBPOの利用が徐々に増加してきましたが、その一方、当時の日本ではBPOに対する認知度が低く、BPOの利用は進んでいない状況でした。
参考:野村総合研究所
ITソリューションフロンティア 2009年7月号
https://www.nri.com/このことから、日本において本格的にBPOの認知が高まったのは2010年代に入ってからと言えます。
なお、世界的に見てもBPOの普及が進んでいなかった段階である1990年代以前、日本におけるアウトソーシングは、自社で処理できない業務を外部に委託する、という形が主流となっていました。
そのため、当時行われていたアウトソーシングは、情報システムの導入作業や、事務的な作業のみを外部に委託する形のように、単発的な業務のみを委託するケースがほとんどでした。
「グローバル化」に対応するため、BPOを導入
2000年代、世界的に見るとBPOの利用が進む中、日本ではBPOの利用は伸び悩んでいた状況でしたが、そのような状況でも、少しずつBPOが利用されるようになってきました。
その背景としては、世界的な経営環境の変化があげられます。具体的には、1990年代に広がりを見せた「経済のグローバル化」ですが、2000年代に入ると、日本においてはグローバル化がさらに進展することとなりました。
それまでの日本においては、終身雇用や年功序列をベースとした「日本型経営」が一般的でしたが、グローバル化が進展したことにより、今までの経営手法が通用しにくくなった日本の企業は「変化する時代にいかに生き残るか」という点に主眼を置くようになったのです。
企業が生き残るためには、「売上の上昇」と「経費削減」を実現する必要がありますが、「経費削減」に着目した場合、アウトソーシングにおいて、単発的な業務のみを外部に委託するよりも、業務を一括的に外部委託した方が、より一層の経費削減を期待できることになります。
日本において、BPOが2000年代から徐々に使用されるようになった背景としては、経営環境の変化が大きな要因と言えます。
「労働力人口の減少」に対応するため、BPOを導入
さらに、近年はBPOが注目を集めるようになりましたが、その背景としては、「人手不足への対応」があげられます。
2010年代に入ると、日本はこれまでの人口増から一転して人口減少社会へと突入しました。また、単なる人口減少にとどまらず、少子高齢化によって労働力人口が減少する形となり、近年は多くの企業において人手不足に悩まされている状況です。
企業経営において、人手不足の状況はまさに痛手と言えますが、逆の見方をすれば、人手不足の状況がBPOを導入する切っ掛けになったとも言えるのです。
BPOによって、一括的なアウトソーシングが可能となれば、コスト削減が可能となりますが、それにとどまらず、業務の外部委託によって余剰となった人員を、人員不足に悩む他の部署に配属することが可能となり、より効率的な人員の配置が可能となります。
それによって、企業の売上アップも期待できることでしょう。
BPOが利用されるようになった切っ掛けについてみてみると、グローバル経済化や労働力人口の減少局面など、社会情勢が変化し、企業経営において難しい舵取りが必要となるタイミングであったと言えます。
現在問題となっている労働力の人口減少は、今後も続くと予想されますが、むしろ、企業経営において逆風が吹いているときこそ、業務の効率化が期待できるBPOを導入する絶好のタイミングと言えるのではないでしょうか。
(画像は写真ACより)