ファブレス化の問題点
ファブレス化はシリコンバレーなどの資金をあまり持たないベンチャー企業などが、こぞって採用してきた経営手法です。
具体的にはメーカーが企画・開発などのコアコンピタンスにビジネス活動を集中するために、自社で工場を持たず、外部に委託を行うビジネスモデルです。
ファブレス化によるメリットは、設備投資が不要で、資源をコアコンピタンスに集中できること、そして変化への柔軟な対応などがあげられます。
しかし、メリットがある反面、ファブレス化はデメリットももたらします。今回は、ファブレス化のデメリットについて、事例を含めて整理したいと思います。
製品や技術ノウハウの漏洩
ファブレス化に伴って、最も気を付けなければいけないのは、製品の製造ノウハウやブランド価値の漏洩です。
以前の中国では、あまりに本物に近いコピー商品が出回っているので、調べたところ、なんと、製造していたのは委託先の工場だったと言った、笑うに笑えない事態に遭遇することもありました。
さすがに、今ではこのようなことはありませんが、しっかりとした契約とWin-Winの関係を結ぶことで、製造技術やノウハウなどのブランド価値を守り、高める必要があります。単なる外注ではなく、運命共同体として活動できるような関係式の構築が必要です。
製造ノウハウが蓄積できない
ファブレス化の問題点は、実際の製造を経験できないことで、ブラックボックス化してしまい、いつのまにか、ノウハウが委託先工場に蓄積されてしまうことです。
日本企業の得意な製造技術は、カイゼン活動などを通じて地道に構築していくものですが、工場を持たないメーカーは、設計やアイデアによって、それを補完し、複数の工場に委託することで、ノウハウを競わせるような仕組みを作る必要があります。
出来るだけ、製造工程を見える化させ、共通の視野、視点で委託先とコミュニケーションを進め、顧客からのクレームをしっかり委託先に伝え、課題の抽出や問題点を把握して、カイゼン、解決へと進める必要があります。
センサーや測定機器のキーエンスは、付加価値の高い分野は自社で生産し、機密性の低い分野は外部に委託しています。
品質管理、工程管理が難しい
品質管理は商品の価値を維持するための大事な機能です。ややもすると、委託企業に丸投げしてしまいがちですが、ここはしっかりと仕組み作りを行い、品質の向上やカイゼンを進める必要があります。
具体的には監査制度や、委託先の検査員などに資格制度を設けるなどのチェックシステム構築や、検査装置の導入による科学的、統計的な検査、分析の仕組み作りが必要です。
またQCサークルなどのボトムアップの仕組みなどを導入して、委託先企業の従業員が単なる作業員にならないようにすることも意味があります。
最近は委託先企業の労働環境などもステークホルダーによってチェックされる時代になりました。総合的な観点から、委託先との関係式を構築していくようにします。
カーテンなどのインテリア大手のサンゲツは、品質管理と生産管理を自社で行い、商品の開発スピードを上げることで、コントロールをしています。
コストの発生
設備投資の初期投資は無くなるものの、ランニングコストは初期投資を含めたによって算出されます。自動車を購入する時に、現金一括で購入する場合と、分割払いやリース方式の利用と同じです。
自社工場であれば、長期に設備や土地が稼働すれば、最初の投資は大きいものの、減価償却などによって、だんだんコストは下がり、利益も上がってきます。それに対して、ファブレス化によるランニングコストは簡単には下がりません。
短期で状況を確認したい時にはファブレス化は最適ですが、長期に製品が生き残るのであれば、内製化も必要になるかもしれません。
日本の医薬品メーカーは、コストが高い創薬開発をファブレス化しています。医薬品開発を進めるシンバイオ製薬は、外部企業とのコラボレーションでラボレス/ファブレス型開発によるローコスト化を進めています。
(画像はPAKUTASOより)
(画像はイメージです)