ファブレスのメリット
ファブレスとは、言葉通りfabrication(工場)を持たないビジネスモデルを意味します。その名の通り、工場を持たないことで、メリットとしては、莫大な設備投資を抑えることができることです。
同時に、技術が急速に変化するようなハイテク分野では、技術の陳腐化から抜け出すことができます。また、資金力のあまり多くないベンチャー企業などもよく利用するビジネスモデルです。
ファブレスのメリットは初期投資のミニマム化、損益分岐点の大幅な引き下げ、事業撤退も初期投資が少ない部分、身軽に、そしてスピーディに判断することができます。また、工場を持たないことで、需要に応じて分散発注を行い、優良なメーカーを選択できます。
ファブレスのデメリット
デメリットは、委託先の品質の維持や、ブラックボックス化、企業秘密などの維持が難しく、競合企業との優位性の確保や、高度な企画開発力、ブランド力を構築し、委託先との関係を常に維持する必要があります。特に、製造品質の維持には生産管理や品質管理を徹底する必要があります。
ファブレス経営の欠点は、自社で製造ラインを持たないことから、製造技術やスキルを蓄積できないことです。しかし、人件費が大きく影響するようなビジネスの場合、海外への製造委託によるコストの削減は大きな競争力になります。
ファブレスの由来
ファブレス経営は80年代、米国の半導体産業から生まれています。半導体産業はムーアの法則で知られるように、集積回路のトランジスターの数が18ヶ月ごとに倍になるというスピードで進化するので、数年前の設備があっという間に陳腐化してしまいます。
業界では、開発に特化したファブレス企業と、生産に特化した生産装置メーカーが集約化されながら生き残ってきました。
ファブレス経営は今や様々なところで採用されています。日本酒メーカーは日本酒を作りますが、出来上がった清酒を瓶詰めし、紙パックに充填するのはほんの数日です。
そのためだけに、設備を導入していては、土地も建物も設備も1年の大多数が無駄になってしまいます。共同で充填会社を設立するか、専門の会社に委託をしています。
ファブレスの代表企業
ファブレスでよく知られているのが、Appleや半導体のARM、ファッションのH&M、日本でもニンテンドーやユニクロ、ダイドードリンコなどがよく知られています。
これらの企業の特徴は、新製品の投入や変化が激しいこと。そして、いざ発売となると、大変なボリュームが必要になることです。
これらのファブレス企業は、設備や人材の確保という、コストがかかり、今後も難しい作業を回避し、設備や人を変動費として位置づけることで、しがらみに縛られない自由な活動が可能になります。そして、それ以上に大事なのが、企画、開発、デザイン、マーケティングなどの活動に専念することができるのです。
「モノ」から「コト」へ
人々の消費行動について、「モノ」から「コト」へということがよく言われます。事実、最近のトレンド誌のトレンドランキングを見ても、モノが登場する機会が少なくなっています。
まさに、企業活動も「モノ」から「コト」へという流れが動いています。そして、これらの企業に共通しているのが、高利益体質を備えていることです。
日本とはもともと企業利益の発想が異なりますが、日本の製造業の場合、営業利益率5%でも優良企業と言われていますが、Appleは約3割、ARMは5割、H&Mも1.5割の高利益体質です。
コベルコシステムより
http://www.kobelcosys.co.jp/sp/column/monozukuri/20170201/まとめ
BPOもファブレスもある意味では共通の発想です。設備投資などの重厚長大のコストや労力から放たれて、ユーザーサイドの素早い動きに反応し、先手を打っていくユーザー志向の先を行く経営発想かもしれません。これからもファブレス企業の動向に目が離せません。
(画像はイメージです)