身近な中国BPO
海外BPO といえば、欧米ではインドということになりますが、日本の場合は中国が距離的にも近いこと、日本への留学経験者や現地で日本語を勉強する人が多く、コミュニケーションがとりやすいことなどから、海外BPOとしては、中国が最も身近で、様々な業種のBPOが行われています。
今回はそんな中国のBPOについて整理したいと思います。
IT系のオフショア開発などの場合、特別日本語が堪能である必要はありませんが、非IT系の海外BPO は、日本語がある程度のレベルである必要があります。
ベトナムやフィリピンなど、人件費は中国より安い国はありますが、日本語が理解できる人材を採用しようとすると現状はまだまだ難しいというのが現実です。
環境は整っている
中国は米国や日本には劣るものの、インフラはかなり整ってきています。
最近ではIT企業を誘致するために「ハイテクパーク」といった地域開発を行うなど、アセアン諸国に比べると機能面、コスト面の改善が進められています。こうしたIT技術の導入が、日本などとのビジネスコミュニケーションにとってプラスになります。
中国は高学歴の人が多く、日本語の話せる人材も集めやすい国です。BPOベンダーでもあるアクセンチュア社は、世界各地でBPOの拠点を運営していますが、中国では大連、上海、成都の3カ所の拠点で活動しています。
特に、日本向けのBPOという点では、中国の人件費も高くはなっていますが、人材的にタイやマレーシアでは難しいとの見解を示しています。
人件費は高いが人材は豊富
3拠点で最も規模の大きな拠点が大連です。上海は人件費が他の地区よりは高いのですが、医療やデータ分析などの先進的な人材を集めやすい地域です。成都は内陸部に位置しており、人件費が安く、大学が沢山あるので、人材市場は豊かです。
世界一の人口を持つだけあって、人材の豊富さでは一番です。デメリットは他のアジアに比べると人件費が上がってきており、中国のBPOへの期待は、コストから人材にシフトしていくものと思われます。
中国の人材は日本のように終身雇用ではなく、米国のように、仕事を踏み台にして、レベルアップをしていくスタイルなので、長期間同じ職場に定着することはなく、6か月から2年位で職場を移っていく傾向にあります。
その結果、優秀な人を採用して教育しても、それが次につながりません。マニュアルやプロセスマップなどをきっちり整備する必要があります。
政治的な不安には注意
もうひとつ問題点は政治的な不安定性です。特に日本に対する感情は、反日デモや不買運動などが発生すると手をつけられないものになります。
また、中国の土地は全て国と農民の集団所有という特殊な管理体制になっています。理解不足のまま土地を取得してトラブルになった企業は少なくありません。
中国でのBPOを成功させるためには、まず日本語を理解する人材の確保が第一です。そして仕事をこなすうえでの意識づくりや、トレーニングが欠かせません。
複数の人間に同じことをさせて、答え合わせを行い、答えが異なっていたら、なぜ、違っているのかといったことを5W1Hで確認させるなど、きづかせることや、長所を引き出すことが大事です。
基本に忠実に
業務の可視化が成功の基本になります。従来ブラックボックスであった仕事内容を明確化し、BPOを機会にプロセスマップなどを作成します。
BPOベンダーとの間でしっかりサービスレベル契約を交換し、期待していること、達成したことを両者で理解することと、PDCAを回して改善を進めることが大事です。
BPOもある程度ボリュームが大きくないと効果が出て来ません。国内で複数の部署や地域で行われていた業務などは、部署や地域でそれぞれ異なった手法がとられていることがあります。海外BPOを機会に標準化を進めることが、結果につながっていきます。
(画像は写真素材足成より)
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