あえてインソーシングを取り入れる企業も
企業においては、コスト削減や適正な人員での運営など、業務の効率化を図るためにアウトソーシングを行うケースがあります。
アウトソーシングを行うことによって、企業としてはさまざまなメリットを得ることができますが、その一方で、企業の中にはアウトソーシングの逆の行為と言える「インソーシング」を行うケースもあるのです。インソーシングとは、具体的にどのような内容なのでしょうか。
インソーシングとはどんな業務?
インソーシングについて説明すると、業務を外部に委託せず、自社で業務を行うことを指します。また、インソーシングは、これまで行っていたアウトソーシングを取りやめて、自社での業務に戻すことを指す場合があります。
つまり、インソーシングとは、言い換えれば業務の内部化、あるいは内製化となります。
企業が直面している現在の状況としては、労働力不足であること、そして政府主導の「働き方改革」の実施があげられますが、そのような状況においては、自社の業務を外部に委託することが合理的と言えそうです。それにもかかわらず、なぜ企業はインソーシングを行うのでしょうか。
インソーシングのメリットは?
そこで、インソーシングのメリットについて調べていくことにしましょう。
インソーシングのメリットは、「業務のノウハウを着実に蓄積できること」があげられます。このメリットは、特に専門的な業務において大きな効果を発揮します。
専門的な業務は高度な内容を含むものが多く、ノウハウの獲得や、専門的な業務を理解する人材の育成においては、試行錯誤を重ねる必要があり、一筋縄では業務が進まない場合があります。
しかし、このことは裏を返せば、高度なノウハウの獲得により業務の効率化が実現しやすくなると言えます。
費用対効果を考えるならアウトソーシングではなく、あえてインソーシングを取り入れる方が、費用に見合った効果が期待できることもあるのです。
そのほかのメリットとしては、従業員のモチベーションが上がりやすいことです。
経営者の立場からアウトソーシングをみた場合、経費の削減につながることから合理的と言えますが、労働者の立場からアウトソーシングをみた場合、労働者自身が長い間携わってきた業務がなくなってしまうことになるため、労働意欲の低下につながってしまうことがあります。
労働意欲の低下は、作業の質の低下につながるだけでなく、場合によっては従業員の辞職につながり、企業の従業員数が減少してしまうことにもなりかねません。
見方を変えれば、従業員に支払う給与が割高であったとしても、業務の質が高ければ、費用対効果は十分に期待できることになるのです。
インソーシングを導入した方が良いケースは?
経営者の立場としては、アウトソーシングとインソーシングのどちらにすべきか、と迷ってしまうことがあるかもしれませんが、どのような場合にインソーシングを行うべきなのでしょうか。
インソーシングを行う前提としては、自社の主力となる業務の運営に大きな支障が生じていないことがあげられます。
つまり、現状は主力業務の運営にある程度余裕があるものの、何も改善しなければ、今後は主力業務の運営に支障が生じかねない、という状況において、アウトソーシングとインソーシングを比較検討して選ぶべきでしょう。
それを踏まえて、インソーシングを行った方が良いケースとしては、アウトソーシングによって費用対効果を期待しにくい場合があげられます。
アウトソーシングによって費用の削減が実現したとしても、アウトソーサーが行う業務の質がさほど高くなければ、費用の削減が業務品質の低下につながってしまいます。
業務品質が低下する原因としては、アウトソーサーの専門知識や業務スキルが低いことも考えられますが、自社とアウトソーサーとの間で業務の方針が一致していないこと、あるいは、アウトソーサーが自社の要求を理解していないことが考えられます。
このような場合は、両者で綿密な打ち合わせを行うべきですが、それでも業務に対する考え方が一致しなければ、インソーシングに切り替えるタイミングと言えるのかもしれません。
現在は、アウトソーシングが一般化している状況ですが、アウトソーシングはメリットのみならず、デメリットもあることから、業務を合理化するならば、アウトソーシングとインソーシングのどちらが良いのか、ということを十分に比較・検討することが重要と言えるでしょう。
(画像は写真ACより)